彫金工具については旧ブログでかなり色々とお話ししています。
しかし投稿から年数も経っていますので、改めて工具の最新事情を書いていきます。

よければ旧ブログもぜひご覧ください。
旧ブログ「彫金工具のお話」

やっとこ、のお話。
まずは写真をご覧ください。

まぁ何かつかむようなやつですね。

基本的には先端の形と大きさが違います。

ペンチと似ていますがウィキで調べると、
切断能力があるのがペンチみたい。
やっとこはつかむだけです。

そして彫金用のやっとこに限れば、
つかむ部分にギザギザが付いていないです。

ペンチみたいにギザギザが付いていると、
地金を傷つけてしまいますね。

やっとこの用途とは

基本やっとこは2つの用途、たまに変わったことに使います。
 ①ものを曲げる
 ②ものを掴む
 ③それ以外

もっと色々な使い方をしている方もいると思いますが、
僕はこんな感じ。

プロが使っているやっとこはこれだ!

あくまでも豊橋にいる、いちプロがです。
作るジュエリーによってかなり違いはあるでしょうが、
どんな作業に使うかを押さえておけば、必要なものも判ります。

曲げる系

金属を曲げる系ですね。
どいつもこいつもなかなかのレギュラーメンバー。
棒を丸くして指輪にする、パーツを曲げるときなどに登場。

先端片側が丸くなっているのが特徴です。
このやっとこは全て自分で(削って)丸く加工しましたが、
初めから丸くなっているのも売っています。

左の2本はガッチリ、しっかり強い力が要るとき用。
一番左は地金保護のゴムが付けてあります。
残りは太さ違い。曲げたい物の大きさによって変えます。

こんな感じ。
キレイに丸く曲げるのは、多少のコツが要りますが、
やっとこのサイズがあっていれば比較的やりやすい。

曲げる系まとめ

金属やパーツを曲げたいときに必要です。
趣味でやっている方も便利ですので、
真ん中くらいの大きさのを1本くらい持っていても良いと思います。

仕事にしている方は、自然とたくさんになってしまう工具だと思います。
出来なくはないけど、サイズがあったものの方が綺麗に曲げられますよね。

掴む系

手で持つには少しつらい場面。
削りたいパーツが小さすぎるとか、薄くて持ちづらいとか。
そんな時に登場します。
スタメン9人。お気に入りのクリーンナップが2~3人ほどいます。

先端の幅とやっとこの大きさの違いですね。
一番左は地金保護のゴムが付けてあります。

こんな感じでがっちりつかんで、
削ったり、切ったりできます。

小さなやっとこはマルカンを持ったりできますね。
このステンレスやっとこは結構活躍しています。

こんな変わった形のものもあります。
普通の平のやっとこの内側を丸く削って、
石座を掴んだりするのに使っています。

掴む系まとめ

趣味でやっている方で、ヤスリを多用する(金属をけずる)事が多い場合で、
ちょっとものが持ちにくい時はやっとこを使って持つのもありです。

仕事をしている人は、地金制作中心なら自然と増えますね。
あったらあっただけ、効率が良くなると思います。

特殊系

上記に当てはまらない場面で使われるやっとこです。

これは特殊というより、万能系。
掴むのにも使うし、曲げる(真ん中の空間ではさむ)ことも多いです。

石留めやっとこ。
宝石の爪を倒すのに使います。

こんな風にして爪を倒します。(実際には宝石をいれます)

ですが、実際に自分はほとんど使っていません。

ちょっと昔の職人さんはこれを使うイメージがありますが、
自分の場合は、爪を倒す場合は自作の専用工具かタガネを使っています。

扱うのにそれなりにテクニックが要りますね。
上手く使わないと宝石を破損してしまうリスクがある工具、という感じ。

ちなみに以上の3本は全て同じ商品(石留やっとこ)です。
上の1本は石留用には使っていませんが。
下の2本は先端を加工して、石留用にたまに使います。

掴む系のやっとこの内側を丸く削ってあります。

丸線、パイプを掴む専用です。
なので、掴む系に入れてもいいですね。

サイズ違いの凹みをふたつ付けてあります。

片側が三角形に削ってあります。
何かを作るときに作ったやっとこですが、
何のために作ったかイマイチ覚えていません;;

何かに三角の凹みを大量につける?
凹んでいるパーツを掴むため?

仕事に合わせてやっとこを加工することもある、という事ですね。

特殊系まとめ

趣味でやっている方はあまり考えなくてよいやっとこです。
仕事にしている方は、その方の制作スタイルが見えるようなアイテムですね。
他の方のやっとこを見てみたいです。

実はまだある

主に海外で買ったものです。
多分左上の青いの以外は日本でも買えると思います。

完全に丸くなっているやっとこ。
マルカンとか、石座とか、綺麗な丸を作りたいときに
巻きつけるように使います。

ただ、これはこのでかいの以外、まったく使っていません(後述)

パラレル(平行)やっとこ。
これは大活躍のレギュラーメンバーです。

通常のやっとこ(右)は先端が広く、内側が狭く開きますが、
これは平行に開きます。

主に掴む系になりますが、点でなく面で掴めるという事です。
これが彫金では便利。鬼便利。

ただちょっと取っ手が短く、太く、滑りやすい。
しかも全体が重くで持ちにくいのが難点。
黄色いゴムを滑り止めにしたり、中のばねを外したりしています。

少しだけ改造してやると、使いやすくなります。

こちらはかなり特殊なやっとこ。
通称”金沢スペシャル”

0.5ミリ違いの丸いパーツが揃っていて、
先端を取り換えることができます。

しかもパラレル。

こちらはかなりの改造をしています。
詳しくは旧ブログ
「彫金工具 ~ヤットコ(金沢スペシャル)編~

このやっとこが出来上がってからは先述の
丸いやっとこをまったく使う必要が無くなりました。

これ。
唯一、これよりも大きい、左のやつだけたまに使います。

やっとこをどこで買うか問題

ここまで紹介しておいてなんですが、
今まで紹介したものと全く同じやっとこは、現在ほとんど売ってないと思います。

M.ARAI

自分のもっているやっとこは大体がこの新井製。
が、新井製のやっとこはもう生産していないそうです。
正直めちゃ使いやすいですので、残念です。

昔、生産終了を聞いて買い足しました。
同じやっとこが5本。
1本はスタッフM(ルパンが好き)のものなので、自分のは4本。
絶対4本も要らないのですが、体験教室専用とかになってます。

趣味でやられる方へ


新井製はないものの、似た感じのものはたくさん売っています。
彫金工具専門のネットショップでも良いですし、
やっとこは全体のサイズと素材(鉄かステンレス)だけで選べばいいです。
何なら、素材もどっちでもいいですので、アマゾンとかでもいいと思います。

参考までにおすすめはこの4本。
自分もこれで7割くらいいけます。
これがあれば多分困りません。
これにプラスしたくなったらもう玄人はだしです。

まとめ

やっとこは地金を扱う(加工する)ための工具。
使う人はある程度限られています。用途をしっかりとらえて
欲しいものだけ買う、で遅くありません。

ジュエリークルールは愛知県豊橋市にあります、手づくりジュエリーのお店です。


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